吉野家の牛丼 [おでかけ]
大学に入学したばかりの頃、月末に仕送りを使い切りそうになるとよく吉野家に行った。あの当時の吉野家の牛丼の品質はひどいもので、肉は細い輪ゴムで編んだ網のよう。うっかり飲み込んで噛み切れずオェッとなって涙を浮かべて食べた。「貧乏だからこんなものしか食べられないんだ。いつかこんなもの食べずに済むようになってやる。」と思った。 ほどなく吉野家は倒産したと聞いて、さもありなんと思った。
以来約30年、吉牛を食べたことがなかった。松屋もすき屋も行ったことがない。おれはあんなもの食いに行かずに済むようになったのだと思っていた。ところが最近周囲から今の吉野家は違うぞと聞かされた。BSEを乗り越えて強く旨くなったのだとか。
そこで勇気を出して吉野家に行ってみた。
牛丼大盛440円。当時のことが思い出されて泣いてしまうかもと思っていたが、なんの感慨も浮かばずあっという間に流しこんでしまった。旨くも不味くもない。ただ腹いっぱいになった。なんだか拍子抜けだった。